どうやらアロエ属がいつのまにか6つの属に、そしてハオルチア属が3つの属に分割されたらしいです。結構前に。
というわけで、なんとなくこの頃の多肉植物関連書籍では、それっぽいこと書かれているなぁとは思ってはいたのですが、改めて今回調べてみましたのでまとめてみます。主に自分の覚書用です。
ということで、ミクロなゲノム解析(いわゆるDNA解析ですね)から実証的に分類体系を考えていった結果、2014年に南アフリカの植物学者 John Charles Manningさんによって、以下のようにアロエ属とハオルチア属の系統が作り直されたそうです。
アロエ属は下記の6属に再編されました。
- アロイデンドロン属(Aloidendron)
- クマラ属(Kumara)
- アロエ属(Aloe)
- アロイアムペロス属(Aloiampelos)
- アリスタロエ属(Aristaloe)
- ゴニアロエ属(Gonialoe)
ハオルチア属は下記の3属に再編されました。
- ハオルチア属(Haworthia)
- ツリスタ属(Tulista)
- ハオルチオプシス属(Haworthiopsis)
なお、遺伝学的な系統樹は下記のとおりです。赤字が新しく分離された属になります。
なお、自生地ですが、アロエ属とアロイデンドロン属以外の7つの属は南アフリカに限定されています。
それではひとつひとつ特徴やその中の種を見ていきましょう。
アロイデンドロン属(NEW!)
旧アロエ属。アロイデンドロンとは「アロエ」+「デンドロン(=木)」で、いわゆる樹木状になるアロエを示すそうです。ディコトマを代表する大型のアロエっぽいやつの属です。World Checklist of Selected Plant Families: Royal Botanic Gardens, Kewによれば、下記の7種があるようですが、その中のサバエウムについては、アロエ学者の中でも属に含むか議論の余地があるらしいです。
- Aloidendron barberae(バーベラエ)
- Aloidendron dichotomum(ディコトマ)
- Aloidendron eminens (エミネンス)
- Aloidendron pillansii (ピランシー)
- Aloidendron ramosissimum(ラモシッシマ)
- Aloidendron sabaeum(サバエウム)
- Aloidendron tongaense(トンガエンセ)
下の写真はAloidendron dichotomum(ディコトマ)。
By Harald Süpfle – photo taken by Harald Süpfle, CC BY-SA 2.5, Link
個人的感想では、アロイデンドロンという響きがかっこよくて好きです!デストロンみたいで!
クマラ属(NEW!)
旧アロエ属で、現在は南アフリカ共和国西ケープ州原産の下記の2種のみのようです。特徴としては”扇状”のアロエになるでしょうか。なお、このクマラ属は、1786年にドイツの植物学者フリードリヒ・カシミール・メディクスによって記述され、それが復活した形になるのですが、なぜ彼がこのクマラという名前を選んだのかは不明とのことです。
ちなみに、クマラ属はゴニアロエ属との間で、属間雑種が記録されていて、現在では新種の属間雑種 × ゴニマラ属というらしいです。
- Kumara haemanthifolia(ハエマンティフォリア、和名:眉刷毛錦)
- Kumara plicatilis(プリカティリス、和名:乙姫の舞扇)
下の写真はKumara plicatilis(プリカティリス)。
By Abu Shawka – Own work, CC0, Link
個人的感想では、この2種のアロエは、他のアロエと比べてたしかに異質な形をしていますので、別属でいい感じだと思います。クマラ属という意味不明な属名もクール。
ハオルチア属
アフリカ南部(モザンビーク、ナミビア、レソト、スワジランド、南アフリカ)固有のご存知小型多肉植物です。従来からある属なので説明は省略。
下の写真はHaworthia emelyae。
By Abu Shawka – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
アロイアムペロス属(NEW!)
旧アロエ属。アフリカ南部で見られる7種からなる属です。「アロエ」と、つる性植物を表すギリシャ語「ampelos」が由来だそうです。climbing aloes, rambling aloesとも。一般的には多枝性の登攀性低木で、長いとげのある茎を持ち、地面に大きな木質の基部を持っています。これらの特徴と、柔らかくて細長い三角形の葉が茎の下部を包み込むことが特徴らしいです。ようは草のようなアロエとのこと。
- Aloiampelos ciliaris(和名:笹アロエ)
- Aloiampelos commixta
- Aloiampelos decumbens
- Aloiampelos gracilis(グラキリス)
- Aloiampelos juddii
- Aloiampelos striatula(和名:椰子アロエ)
- Aloiampelos tenuior(和名:青々錦)
下の写真はAloiampelos ciliaris(和名:笹アロエ)。
By Salicyna – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
個人的感想では、とりあえず「ペロス」という響きでしょう。ペロスペロス!
アストロロバ属
ハオルチア属に非常に近縁ですが、花が規則的で八重に尖っていないことで区別されます。花は小さく白色で、細長いレース状のものに群生して見えます。上から植物を見ると星(アストロ)に見えます。従来からある属なので説明は省略。
下の写真はAstroloba congesta。
By S Molteno – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
アリスタロエ属(NEW!)
旧アロエ属で現在は唯一1種が登録されています(いわゆる一属一種)。その1種はアフリカ南部を原産とするアリスタロエ・アリスタータです。通称レースアロエとして知られているようです。
- Aristaloe aristata(アリスタータ、和名:綾錦)
下の写真はAristaloe aristata(アリスタータ、和名:綾錦)。
Aristaloe aristata By Jerzy Opioła – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
うーん、この一属一種が必要なのか、イマイチわかりませんがDNAがそう言っているなら、なかなか面白いことなのかもしれません。
ゴニアロエ属(NEW!)
旧アロエ属。現在は、南アフリカ、ナミビア、アンゴラに自生する3種が存在しています。三重のコンパクトな三角形の葉っぱが特徴です。いわゆるホームセンターでよく売っている千代田錦系のやつですね。
- Gonialoe variegata(和名:千代田錦)
- Gonialoe sladeniana(和名:素芳錦)
- Gonialoe dinteri
下の写真はGonialoe variegata(和名:千代田錦)。
By Kurisu rs at the English language Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link
確かにそう言われてよく見ると、アロエというよりかは、硬葉系ハオルチアに近いのかもしれない気がするかもしれないという感じです。
ツリスタ属(NEW!)
旧ハオルチア属(旧ロブスティペッドンキュラレス属)。なお、ツリスタの言葉の意味は不明です。属の特徴は、(他のハオルチア属と比較して)大型であること、茎のないロゼット状の成長形態であること、繊維質ではない葉に黄色の滲出物があること、丈夫な台形をした特徴的な花を咲かせること。しばしば白い塊状の葉を持つことも多いです。いわゆる硬葉系巾広葉。南アフリカの固有種。現在下記の4つの種があります。
- Tulista kingiana
- Tulista marginata(和名:瑞鶴)
- Tulista minor
- Tulista pumila
下の写真はTulista kingiana。
By Abu Shawka – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
ツリスタ。ハオルチアに詳しくない私としては、後述のハオルチオプシスとの違いがよくわかりませんが、ツリスタという謎の響きは好きです。
ハオルチオプシス属(NEW!)
旧ハオルチア属。「プシス」は形態を意味し、ハオルチアに似ているという意味です。一般にハオルチア属よりも葉が固くて丈夫で、しばしばロゼット状に配列され、しばしば盛り上がった白色のマーキングを持っているのが特徴。いわゆる硬葉系ハオルチア。いわゆる十二の巻、瑠璃殿、竜鱗系。
- Haworthiopsis attenuata(和名:深夜の星)
- Haworthiopsis coarctata(和名:登竜)
- Haworthiopsis fasciata(和名:十二の巻)
- Haworthiopsis glauca
- Haworthiopsis longiana(和名:巨竜)
- Haworthiopsis reinwardtii(和名:鷹の爪)
- Haworthiopsis limifolia(和名:瑠璃殿)
- Haworthiopsis koelmaniorum
- Haworthiopsis granulata
- Haworthiopsis tessellata(和名:竜鱗)
- Haworthiopsis venosa(和名:大帝鱗)
- Haworthiopsis woolleyi
- Haworthiopsis pungens
- Haworthiopsis scabra
- Haworthiopsis viscosa(和名:竜城)
- Haworthiopsis bruynsii
- Haworthiopsis sordida
下の写真はHaworthiopsis fasciata(和名:十二の巻)。
By Tangopaso – Self-photographed, Public Domain, Link
まぁ確かに硬葉系ハオと軟葉系ハオが同じ属というのはなかなか理解しづらかった気はします。プシスという響きは、サボテン好きとしては歓迎!
ガステリア属
いわゆる臥牛とその仲間たち。ベロっぽい葉っぱで、胃(ガスター)っぽい花が咲いて、中途半端に葉を折っても葉挿しができることが特徴。たぶん。従来からある属なので説明は省略。
下の写真はGasteria batesiana。
By S Molteno – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
ということでまとめでした!
日々新しい情報が入り、ややこしいですがそれはそれで面白いなと個人的には思いますね!
コメント
これは参考になります。昨今、この分類でブログとかも書いてるかたもいるのですが、ハオ関係は学者同士の争いが前から多くてわけわからなくなってましたが属名だけでもDNAできちんと整理されるのはいいのでしょうね。当分なじまないですが。。 ハオルチアも輸入先がシェーラムとかばかりのころのBayerさんの大雑把な分類に馴染んでいるので昨今の種名もついていけないところです。これは保存して勉強します。
ふるんさま
こんにちは。ご来訪&書き込みありがとうございます(人´∀`).☆.。.:*・゚
例えば、日本ハオルシア協会さんの著書では、「APG分類体系は花の構造や遺伝的親近性
(属間雑種のできやすさ)で矛盾点が多く、合理的とは言えない」ともありますし、
DNAがそうだから!って全員が納得!ということでもないようですね。。。
まだまだ議論されるのでしょうね。。。ということでおっしゃるとおり当分はなじまないでしょうね。特にハオの方は。