植物の葉っぱが緑色をしているのは、「緑色の光は吸収されないで反射しているから」だとよく聞きます。ということは、植物にとって緑色の光は、光合成に必要ないということでしょうか。
<注意事項>
いつものとおり、以下の文章は私の独断と偏見が入っておりますので、情報を鵜呑みにはせず、各エビデンスをご参照ください。
LEDでなくとも、植物育成に特化した蛍光灯(ビオルックスなど)も赤っぽい光り方をします。
でもなんで赤色と青色なのでしょうか。
これはおそらく、植物に含まれるメインの光合成色素のクロロフィル(a,b)の吸収スペクトルが下図に示すように、主に赤色と青色にピークを持つためだと思われます(実はもっと細かく述べると、光合成というよりは主に光形態形成、光発芽、光屈性、脱黄化、隠陰反応などに関与する光受容タンパク質のフィトクロムやクリプトクロムなどの吸収スペクトルも関わってくるのですが、今回の記事ではとりあえず省略します)。
グラフによれば赤色と青色の間の緑色(500nm~600nm)の領域ではほとんど吸収はされていないようです。では、やはり緑色は光合成にほとんど使われない・・・・かというと、そうではありません。
実際の葉での緑色の光の吸収率は70%~80%程度あり、[McCree 1972]によれば、緑色の光による光合成作用スペクトル(RQE: Relative Quantum Efficiency)は青色や赤色と比べてもさほど差はありません(下図)、
これは、葉の内部組織構造に起因します。葉は、屈折率が高い細胞と空気とから成り立っているため、葉に入った緑色の光は葉の内部で何度も屈折し乱反射を繰り返します(一部反射した光が葉の外にでるため緑色にみえる)。その結果、何度も葉緑体に遭遇することで、吸収率が上昇します。
逆に、赤色と青色は葉表面の葉緑体で一回で一気に吸収されます。よく光を吸収するのはよいのですが、実は結構すぐに飽和(光飽和)してしまうのです。飽和量以上の吸収した光のエレルギーはどうなるのかというと、光合成には関与せずに「熱」や「活性酸素」に変わります(つまりは単純に、光の吸収率=光合成速度ではないということです)。結果、光合成速度でみると、赤色も青色も緑色もそんなに差がなくなるのです。
また、近年の東京大学の寺島先生の研究では、強い白色光に弱い単色光を足して光合成を測定すると、赤色光や青色光よりも緑色光の方が光合成速度を上昇させることがわかりました[Terashima, I., Fujita, T., Inoue, T., Chow, W.S. and Oguchi, R. (2009)
Green light drives leaf photosynthesis more efficiently than red light in strong white light: Revisiting the enigmatic question of why leaves are green.]。これは、赤色や青色が葉表面で光飽和していても、緑色は内部(葉の裏)まで乱反射するため、葉の内部にあるまだ飽和していない葉緑体に遭遇できるからだそうです(重要)。
さて、このように葉の内部組織構造によって、緑色光が赤色光や青色光と違う形で、効率的に光合成に関与するのであれば、多肉質であるサボテンや多肉植物は、よりその影響が強いのではないかと個人的に思うのです(完全に想像です)。※これは月刊カクタスガイド2015年1月号に記載された「ハオルシアの室内栽培」でも少し述べられていましたので、ご興味がありましたらご参照ください。
というわけで、結局話をまとめますと、「緑色の光は実は重要(・・・なんじゃないかな?)」ということです。
そもそも、赤色や青色が重要で、その間の部分が不要ということは、進化の過程からもおかしいのではないかと個人的に思うわけです。むしろ普通に考えたら波長のど真ん中の緑の部分こそ、成長に使われるべきでしょう(この理論は人間の視感度を基準にはしていますが・・・)。
というわけで、春になったらいろいろな色のLEDでサボテンを育ててみたいです。
こんなことができるのも青色LEDの実用化(=すべての色を再現可能)による恩恵ですねー。ありがたいことです。
[参考文献]
http://www.ushio.co.jp/documents/technology/lightedge/lightedge_36/ushio_le36-10.pdf
http://www.1023world.net/blog/%E5%85%89%E5%90%88%E6%88%90%E3%81%A8led%E3%81%AE%E8%80%83%E5%AF%9F
http://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1855
http://jspp.org/pcp/photo_gallery/back_number/year/detail.html?id=154
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