[図の説明]
太陽の光は、様々な色の光を含んでいます。その中で、植物がシグナルとして受容できる光(光合成のための光ではないことに注意)は、遠赤色光、赤色光、青色光、UV-A、UV-Bです。人工照明で赤色と青色が多い理由もここにあります。
植物は、これらの光を「フィトクロム」、「クリプトクロム」、「フォトトロピン」、「ZTLファミリータンパク質」、「UVR-8」という色素タンパク質で受容し(もっとあったらごめんなさい)、さまざまな形態形成を行っています。たとえば、発芽とか光屈性とか気孔の開閉とか概日リズム制御とか。
その中でも徒長に関わるのが、遠赤色光、赤色光、青色光、UV-Aです。
(赤色光と遠赤色光の強度比(通称R/FR比)について)
まず、太陽から赤色光と遠赤色光が放たれます。
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太陽と植物の間に、光を遮る植物がない場合(つまり図の右の木)、植物は高い強度の赤色光(R)と高い強度の遠赤色光(FR)を受け取ります。この状態をR/FR比が高いととりあえず表現します。
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太陽と植物の間に、光を遮る植物がある場合(つまり図の左の木)、植物は低い強度の赤色光(R)と高い強度の遠赤色光(FR)を受け取ります。なぜなら、赤色光は右の木によって、吸収されてしまうからです(葉緑体のクロロフィルは赤と青をよく吸収するのです。詳しくは下記のも参照のこと。遠赤色光はあまり吸収しません)。この状態をR/FR比が低いと表現します。
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このR/FR比の高低状態を色素タンパク質で受容し、比が高ければ、植物は「俺は誰よりも太陽に近い!」と感じ、低ければ「俺は他の植物の陰にいるんだ!」と感じます。
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前者であれば、もう背丈を伸ばす必要はあまりありません。太陽を存分に受けることができるからです。この場合、葉を展開したり、根が成長する傾向にあるようです(月間カクタスガイド2015年1月号でも、赤い光だけ当てたハオルチアは根だけ伸びるとありました)。
後者であれば、遮っている植物よりも背丈を伸ばさないと光合成できません。結果、何よりも優先して背が伸びます。いわゆる徒長です。
※面倒くさくなったので省略いたしますが、青色(UV-A)も同じ理論です。
というわけで、(光質による場合の)徒長の原因がわかりましたので、対策をします。
簡単です。
- 遠赤色光より強い赤色光を当てる
- 遠赤色光を弱める
- 青色(UV-A)を強める
以上です。
実際に、遠赤色光透過抑制フィルムのような商品も売られています。とても高価なようですが・・・。
小規模だとやはり波長を細かく指定できるLEDがいいのでしょうかね。
ちなみに、太陽を遮る植物がなくてもR/FR比が低くなる時があります、日の出間近とか夕焼けの時です。光が通過する距離が長くなり、短い波長の光が散乱してしまうからですね。故に西側の窓に置きっぱなしの植物などは徒長しがちらしいです。
多肉植物栽培に関連して考えると、例えば、実生一年目の夏型塊根植物(パキポディウムとか)の冬越しで、体力が低く、どうしても休眠させたくない場合、且つ短い日照で徒長もさせたくない場合に、赤色光だけ(もしくは青色光だけ)を当てる栽培をしたら、根(と葉)だけ太くなるんじゃないですかね。どうですかね。
ちなみに、本記事で述べたのは光の波長についてで、光の強度については述べていません。そもそも絶対的に光強度が足りなければ、赤だろうが青だろうが徒長する気はします。ここらへんは注意です。
あと、この理論ですが、例えば、青色光の下で育てた場合、茎の伸長がレタスでは抑制され、ヒマワリやナスでは促進されるという結果がでたという実験などもあり、すべての植物に一律に適用されるわけでもなさそうです(そもそも特定の色素タンパクを持たない植物もあったりするわけで・・・)。というわけで、いろいろ興味のある方は実験してみてください。そして私に結果を教えて下さい。
というわけで、植物の写真が一つもない記事になってしまったので、最後に室内断水中のユーフォルビア笹蟹でも。相変わらずよくわからないタイミングで花咲きました。
うーん、かわいい。
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