エキノカクタス属の代表種といえば、誰がなんと言おうと、金鯱(Echinocactus grusonii)だと思います。むしろサボテン科大代表種ですね。誰もが見たことがある(気がする)サボテンです。↓が金鯱。伊豆シャボテン公園にでっかいのがあるのが有名です。
By Dinkum – Own work, CC0, Link
ちなみに、私が初めて実生したのも金鯱でした。
で、その次に有名なのが太平丸系(Echinocactus horizonthalonius)でしょうか。玄人好みのこれまた大人気種ですね。ちなみに、私は、実は、太平丸やニコリーや翠平丸や尖紅丸や花王丸や雷帝や小平丸などの細かい区別はよくわかっていません。。。今後勉強します。
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とまぁこのエキノカクタス属には、2大人気サボテンがあるわけですが、私がエキノカクタス属で一番好きなサボテンは、この金鯱でもこの太平丸でもありません。
そう、一番好きなやつは
巌(イワオ)です。これです。
By Rod Waddington from Kergunyah, Australia – Biznaga Cactus, Oaxaca, CC BY-SA 2.0, Link
というわけで、今回は”私が勝手に”サボテン界の王様と考える、エキノカクタス・巌(いわお、学名:Echinocactus platyacanthus)の魅力を語ります!
ちなみに以前の私の知識ですと、巌といえば、学名は Echinocactus ingens だったのですが、どうやら現在は Echinocactus platyacanthus(和名としては広刺丸)がアクセプトネームになっているようです(llifle)。
同様に、弁慶(Echinocactus grandis)や春雷(Echinocactus palmeri)なども今はEchinocactus platyacanthus に統合されてるっぽいですね(実際問題、)。
まぁそんなことはどうでもいいです。
「広刺丸」よりも、はるかにセンスのある名前である「巌」を今後も使っていきましょう。
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キュートな女の子とキュートな巌。
By Marinosalas – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
その魅力。まずその和名。
巌ですよ。イワオ!これはかっこいい!君が代にもでてくる巌です!いわおとなりて♪です!
もともとこの漢字は「高く突き出た大きな岩」という意味らしいです。いやはやそのゴツゴツしたネーミングは、荒野にどっしりと鎮座するその風貌にぴったりですね。次回のかっこいい和名ランキングでは、ランクインしそうです。
ちなみに、伊藤芳夫先生のサボテン科大辞典によれば、漢字1文字の和名は、「巌」以外には
暁(あかつき)Pilocereus nobilis f. cristatus
曙(あけぼの)Neomammillaria denudata
箙(えびら)Neomammillaria hutchisoniana
翼(つばさ)Pseudorhipsalis harrisii
轟(とどろき)Neomammillaria glochidiata
だけしかないようです(学名は本文ママです)。
見ても分かるとおり、一文字和名の中でも「巌」は最も有名ですね。選ばれしサボテンなのです。
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次にその性質。
まず巌はとんでもなく巨大になります。高さは2mを超え、幅は1.5mぐらいになります。その大きさは玉サボテン界ではトップです(玉サボテンと柱サボテンの区別は本来ないので、玉っぽいサボテンを「玉サボテン」ととりあえずしときます)。
↓は全然小さい方。高さはこれの2倍近くにはなります。
By United States National Herbarium; Smithsonian Institution; United States National Museum; United States. Division of Botany – https://www.flickr.com/photos/internetarchivebookimages/20498438418/ Source book page: https://archive.org/stream/contributionsfro00unit/#page/n177/mode/1up, No restrictions, Link
上の写真、1900年頃の写真で100年以上前の写真なんですが、なんともいい感じです。「未開の地にこんなバケモンがいたぜ!」的なロマンが感じられる写真でとても好きです(未開の地かどうかは知らんですけど。。。)
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そんでこの巖、実は成長が遅いです。金鯱なんかより全然遅いです。そして100年以上生きます。そんなところが、まさにサボテンなのです。これこそがサボテンなのです。巌は私の中でサボテン界のアイコンなのです。
ちなみに巌の若いときはこんな感じ。よくあるデフォルメされたサボテンのイラストの元って感じがしないでしょうか。ボディの色とどっしりとした球体、稜のバランス、真っ直ぐで痛そうな刺、その数と長さとバランス。そしてこのオシャレ感を排除した無骨さ。これぞ皆が想像する完璧な「サボテン」なのです。
By Salicyna – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
ちなみに、形としては最初は丸っこいのですが、歳をとっていくと巌は縦長になっていきます。その縦長の巌は、厳しい砂漠の太陽から刺で体をよく保護できるように、南または南西に傾く傾向があるそうで、実際、砂漠の旅行者は巌をコンパス代わりに使用できるそうです。さすが巌。
また、その身を砂糖で煮れば、伝統的なキャンディー「acitrón」になるらしいです。ちなみに↓がそのお菓子らしいです。美味しそうですね。さすが巌。
By Cristina Zapata Pérez – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
さてさて、そんな地域に根づいた大切な植物である巌なわけですが、数百年前の書物にも登場しています。
下記の絵は、メキシコシティの国立人類学博物館に所蔵されている、アステカのボトゥリーニ絵文書(Codex Boturini)です。この絵文書は、アステカ族(後のメヒカ族)のアズトランからの移住と、西暦1168年から1355年までの歴史が描かれているらしいのですが、その絵の中に、サボテンが非常に象徴的に描かれています。
By Unknown (codex) – El Comandante (photographer) – Museo Nacional de Antropología (Mexico D.F.), Public Domain, Link
この絵の右側に、玉サボテンの上に人が寝ていると思いますが、これが、アステカ神話の太陽神・軍神・狩猟神であるウィツィロポチトリ(Huitzilopochtli)に生贄を捧げているシーンらしいのです。ちなみに、右上の鷲がウィツィロポチトリ(正確には鷲に姿を変えている)らしいです。
で、「サボテン綺談(伊藤芳夫著)」によれば、これがなんと巌らしいのです。
いやはや実に面白いですね。古代ロマン(?)ですね。
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どうでしょうか。巌の魅力伝わりましたでしょうか。
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というわけで、最後は我が家の巌です。
数年前の多肉ビッグバザールで購入した巌。どっしりしていてかっこいい。
上から。いかにもサボテンです。アステカ文明の景色が見えるようです!
実生の巌。相当小さいうちは、青みがかっていて美しいです。
キリン団扇接ぎの巖。成長速度は、接ぎ木しないよりかは早いですが、驚くほど早いという感じはしませんでした。
接ぎおろした巌。
年齢によって、実に見た目の変化に富みますね。巌。
いつか、数十年後に大きくなったら上に寝て生贄ごっこやりたいですね。
というわけで金鯱に負けるな!いわお!
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