というわけであまり聞いたことがない名前のモラウェッチア・セリカータ(Morawetzia sericata)とかいうヒョロ長毛むくじゃらのサボテンが咲きました!
モラウェッチアですよ!モラウェッチア!
聞いたことないですね!聞いたことないサボテン、いいですね!
横から見るとこんなかんじ。ちなみにこの長い花は、ハチドリ(ハミングバード)が長いクチバシで蜜を吸うためらしいです。面白いですね。
ちなみに、このセリカータは数年前にカクタス広瀬さんでハウス内に地植えされていたものを譲っていただいたものです。
というわけで、そんな謎サボテンですが、サボテン科大事典によればモラウェッチア属の説明は下記の通り。(要約)
- 属名の和名は「武者翁柱サボテン」。
- 属名はサボテンの研究家モラウェッツ(V.Morawetz)に因んだもの。
- 灌木状で、丈低く群生する。
- 頂生(夜咲き)
- 花は花座より咲き出し、管状花(tubular)で、やや左右相対象花(zygomorphic)。
- 花筒子房には羊毛を付けた鱗片を有す。
サボテン科大事典によれば、モラウェッチア属はM. doelziana Backbg. 1936 しか種類が書いておらず、一属一種っぽいです。
となると、「あれ?我が家のセリカータは?」って感じですが、いろいろ調べていくとM. doelzianaと同種(変種?)っぽいですね(あとあとよく調べましたら、原色サボテン事典には、モラウェッチア属にdoelzianaとは別に「セリカータ」とありました。つまり一属二種かな?)。
ちなみにM. doelzianaの和名は武者翁、雪嶺、鶴嶺丸、連峰、原子雲だそう。鬼かっこいい名前ですね。特に最後の原子雲なんかは、素人にはなかなか思いつかないセンスです。これは「武者翁柱サボテン属の原子雲ください」とか言いたいですね。ホームセンターとかで。
さてさてそんなかっこいい孤高のモラウェッチア属ですが、現在は残念(?)ながらオレオケレウス属Oreocereusと併合されてしまったようです、そんで、セリカータの現在の学名はOreocereus doelzianus var. sericatusっぽいです(仕方がないことですが、こうやって属がどんどん少なくなっていくのはちょっと寂しいです。「よくわからないけど何故か属が独立してて特別感が無駄にある感」がとても好きなんですけどね。)
オレオケレウスといえばいちばん有名なのはOld man of the Andesとしても有名なライオン錦(Oreocereus neocelsianus)でしょうか。トゲトゲもあり、白毛もありのファッショナブルな属です。とても好きです。
下写真は我が家のライオン錦。
なお、斑入りになるとライオン錦錦になるのかは不明。
で、下が今回主役のセリカータ。うん。確かにそっくりですね。
ちなみに強い光の下ではこのフサフサの毛はより密になるようです。というわけで、オレオケレウス系をお店で購入するときはフッサフサのやつを買いましょう。健康な証拠だと思います。
原産地はペルーの2000mとか3000mとかの高い山。ちなみに「オレオ」というのもギリシャ語で「山」という意味。ということで寒さには比較的強いようです。-12℃ぐらいまで大丈夫との記事もありますが、これはあくまで乾燥状態でのことなので少し注意。高湿度の日本の気候では審議です。
逆に夏はあんまり好きではないような気がします。「図解サボテン作り」でも、毛柱型サボテンについて、夏は休眠その後秋に向けて植え替えとあります。
ちなみに、フィールドナンバーなどからGooglemapのストリートビューでペルーの山々を数時間歩きまわったのですが、一番オレオケレウスっぽかったのは下のやつ(360度動かせます)でした。もうこれがオレオケレウスということにしましょう。まぁ違うとしてもこんな感じの高い山に生えてるってことで。
それにしてもペルーは、アガベとウチワサボテンが多すぎですわ。
さてさてところで、そもそもなんでこのサボテンが最初からオレオケレウス属ではなくモラウェッチア属だったかというと、その頂点の特徴的なセファリウム(cephalium)とそこから花が咲く構造から、らしいです。
ちなみに、セファリウムとは一部のサボテンの頂点付近にある光合成しない毛むくじゃらの構造のやつのことです。いわゆるメロカクタスのあの帽子のこと。いわゆる花座のこと。
Photograph by Mike Peel (www.mikepeel.net)., CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
さらにちなみに言いますと、学問的に”本当”のセファリウムは、メロカクタス、ディスコカクタス、バッケベルギアにしかないらしく、その他のサボテンのセファリウムっぽいやつは、プセウドセファリウム(pseudocephalium)と呼ぶそうです(私にはセラフィウムとプセウドセラフィウムでどういった違いがあるのかはわかりませんが)。
そんで下写真は、今回の花の根元です。うーん確かに毛は密集しているといえば密集しているかも。
下写真は、アロハドア・ペニキラータ(Arrojadoa penicillata)のプセウドセファリウム。
うーん確かに似てると言われれば似ているかもしれないです。
さらにさらにちなみに言いますと、プセウドとは「偽」という意味です。人気の球形ガガイモ、プセウドリトス(Pseudolithos)=「プセウド(偽)」+「リトス(石)」とかの使い方と同じですね(ちなみに、あまり関係ないですけど、リトープスは「リトス(石)」+「オプス(似る)」です)。だからプセウドセラフィウムは偽花座という意味。
さらにさらにさらにちなみに、プセウドとはラテン語読みであって、英語読みだとシュードになります。有名なチランジアで、シュードベイレイ(Tillandsia pseudobaileyi)というのがありますが、あれも偽のベイレイという意味になります。
(参考):http://www.cactus-art.biz/note-book/Dictionary/Dictionary_P/dictionary_pseudocephalium.htm
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さてさてそんで、オレオケレウスは、分子系統学的には、トリコケレウス連(Trichocereeae)というところに属していて、花の形がよく似た、クレイストカクタス属Cleistocactus、マツカナ属Matucana、デンモザ属Denmozaをはじめ、アカントカリキウム属 Acanthocalyciumやエキノプシス属 Echinopsis、エスポストア属Espostoa、ハアゲオケレウス属 Haageocereusなどと親戚のようです。
参考:https://bsapubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.3732/ajb.1000129
親戚だけあって、異属間交配も可能だそうです。クレイストカクタス(下写真)などとは花の形も似ているし交配できそうなイメージですが、エキノプシスとかとも交配できるのは面白いですね。
下の写真はマツカナ。花の下のほうの毛の生え方なんかはそっくりです。
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というわけで、早速交配したかったのですが、こういうときに限って花が咲いていない!昨日まではいっぱい咲いていたのに!
ので、とりあえず雄蕊を切って冷凍保存しました。米粒は湿度対策。
そんで次の日、短毛丸っぽいのが咲いていたのでちょんちょんしておきました。
うーん、どうなることやらですね。
ということで、かっこいいですな。モラウェッチア改めオレオケレウス!
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