本日は、サボテンの接ぎ木における台木の大きさについての実験(?)です。
接木とは、単純に言えば、成長力の弱い接穂を成長力の強い台木で無理やり育てるものです(個人的解釈が入っていますが…)。
さてさて、台木のパワーで育てるということは、台木の大きさはやはり重要なのでしょうか?台木は大きい方がいいのでしょうか?
伊藤芳夫先生の名著によれば
接木物は丈高い砧木を使ったほど、その後の成長も良好ですが・・・(以下略)
伊藤芳夫「サボテン接木入門」P.384
ということですので、台木は大きい(高い)方が良いらしいです。
というわけで、昨年、適当な実生1年~2年ぐらいのアストロフィツムを結構大きめの鬼面角(Cereus pervianus)に接いでみました。
これです。
接ぎ穂の写真が行方不明で、しかもラベルも落ちまして何を接いだのかわからない(!?)のですが、アストロフィツムの何かです。実生1年~2年ぐらいだと思います。
面倒くさい接木を可能な限り簡素化した伸縮包帯+洗濯バサミ法。
ちなみに以下の写真は、比較用に同時期に接ぎましたアストロフィツム達です。左が大肋骨ストロンギゴロヌム(台木:鬼面角)、右が複隆ランポー玉(台木:竜神木)です。台木も穂木も種類が違うので、単純な比較はできないのですが、参考程度に。
・・・
そして時は経ち・・・1年後。
・・・ほぼ変わってない!!
成長点は動いているので死んでいるわけではないです。きちんと春に植え替えもしています。
・・・う~む。
単純に大きいだけではダメなのでしょうかね。
ちなみに同時期に継いだやつ(大肋骨ヘキランストロンギゴロヌム)。全然上のやつより大きいです。
ちなみに接木1年目で開花しました。
同じく同時期に継いだやつ(大肋骨ヘキランストロンギゴロヌム)。こちらも巨大です。
こちらも接木1年目で開花しました。
ということで、個人的感想では、台木が大きいというよりか、成長過程にある台木がやはりいいのかなという感じでしょうか。
【注意事項】
記事中にも書きましたが、今回の実験は、本来であれば台木は台木で同じ種類、接穂は接穂で同じ種類にしなければ、台木の大小による影響は比較できません。そういう意味では、この実験は何の意味もありません。
ただ「大きな鬼面角に接いだけど別に・・・」という結果は何かの参考になるかなと。そんな感じの記事です!
コメント
有り難いですね。こういう情報!
自分はキリンウチワを見ていて思ったのですが、10cm程度のキリンウチワは成長が早く、直ぐに30cmぐらいの大きさになりますね。
で、その後の様子を見ているとどうなるかと言うと、必ず下と上から小吹、脇芽?枝(?)見たいのが出ますよね。それで幹の成長が止まり脇芽が成長する。
幹の中心の生長点を切断し接ぎ木したりすると、接ぎ穂より脇芽の方が早く伸びる。
これは栄養不足の為伸長が阻害されているのかもしれませんし、
脇芽に栄養が行っているため、伸長が阻害されているかもしれません。
で、鬼面閣の場合なんですが穂の部分に栄養送る前に幹の太さを充実させる必要があったため生長点に栄養を送れなかった。
つまりは、袖ケ浦接ぎ木のばあい、接ぎ穂が充実して成長しているとき袖ヶ浦はまるで筒のように、丸太のように円柱形の形をしている場合が多いです。
対して鬼面閣は平たい陵が太くなるまでの時間が必要なのではないかと考えたわけです。
背が高い植物も背が低い植物も、・・・もしも根から吸収する栄養が同じだった場合、背が高い植物が太くなるためには(植物体を殖やすには)多くの栄養が必要なのではないかと考えました。
対して背の低い植物はそれだけ少なくて済む。
まぁあくまで根の栄養吸収能力に大差がない場合です。
他の例として、短毛丸の接木を見ていると、けっこう根元(玉の半分以下。下半分)で太い個体を切断して接木などをしているように思います。
私はそれを見て、光合成をする部分、葉緑体が少ないと思っています。しかしそれでも接ぎ穂は良く育つ。
・・・幹が細いのでは?と書こうとしたら思ったより長くなりましたね(*_*;
まぁ結局、根の栄養を吸収する能力が接ぎ穂の成長を左右するのではないかと思います。
それはそれで一般的な植物の生態としてはおかしいかもしれませんね。ふつう多くの植物は空気中の二酸化炭素を固定化し、セルロース(木質化や枯れても残る部分)を生産する。
サボテンは枯死ししても、枯れた部分が残らないのは、二酸化炭素の固定化の能力が低く、代わりに根から吸収した水分を蓄えるためかなぁ。でも反証として日光を浴びないサボテンは太くならない。
サボテンの種類で、遮光が必要な種類は確かに枯れる(セルロースが残る)よりも腐る。関係性があるかも・・・。
・・・面白い仮説を考えました。
接ぎ穂が葉緑体を持っている場合、主に接ぎ穂の葉緑体によって植物体の増減が行われる。接ぎ穂からしてみれば接ぎ台の部分は地面から栄養を運んでくるだけ。もし接ぎ穂から接ぎ台への相対的な距離が長い場合((維管束)形成層が細い)、接ぎ台が引き上げた栄養は、接ぎ穂に届くより前に接ぎ台の中で消費(光合成だけではなく、水分の蒸散や植物体の維持)される。接ぎ台の成長が充実していた場合、それ以上光合成をおこなわれず木質化が顕著になる。
のではないか。
葉緑体を持たない種は二酸化炭素を1次固定化したリンゴ酸を受け取ることによりセルロース等を生産できる・・・?
わからん・・・。( ;∀;)
ぐっちぃさま
こんにちは!書き込みありがとうございます!
またご返信が遅れまして失礼いたしました。
高さのみならずその径に注目されたのは、素晴らしいですね!読んでいて大変勉強になりましたし、考えさせられました。確かにおっしゃる通り、元気のいい袖ケ浦接ぎなどはパンパンのものが多いように思います。
ただ、伊藤芳夫先生の著書をよく読みますと、鬼面角接ぎは「稜が深いため、見た目ほど大きな穂木が接げないものの、穂木の成長は速く良好」とあります。ということは、今回の実験ではただ単純に親和性が低かっただけなのか、はたまた接ぎ木が下手なのか(側芽が出てきていないので、明らかな維管束接続不足ということでもないとは思っていますが)、鬼面角自体もしくは穂木が一時的ななんらかの”こじれ”を起こしているのか、、、、という気もしてきました。
原因が親和性にあると仮定すれば、親和性のマイナスを台木の大きさではカバーできないという結果にはなり、実験に一定の意義もあったかと思うのですが、どうでしょうかね。やはり実験というものは数をこなさないと結論はでないですね。
接木と葉緑素の関係は、私はほぼ理解できていなくて、たとえば、接穂のみにアルミホイルでもかけて、日光を遮断した場合、どうなるのか?徒長するのか(でも緋牡丹は徒長していなし、そもそも徒長はフィトクロム他の色素タンパクが関与して、葉緑素は関係がない?)?台木に葉緑素があればそこで光合成が行われるのか(キリンウチワ接ぎはできるだけは葉を残せと聞いたこともあるし、逆にぐっちぃ様のおっしゃるように葉緑素が少ない短毛丸でもよく育つ。葉緑素の力と根の力の関係は?)?逆に台木のみ光を当てなかった場合は?(それは台木を少し残して埋めた接ぎ下しと同じ?)・・・。なかなか難しいですが、おもしろいですね。
いろいろやってみたいものです!(人´∀`).☆.。.:*・゚
返信いただけてありがとうございます!
やはり経験則接ぎ木の回数をこなしていかないとわからないものなのでしょうか。自分も接ぎ木について調べるものの、接ぎ木は諸説ある。で終了していて(*_*;
キリンウチワは光合成が順調に行われるために早く成長するという理屈が私にとって有力に見えてまして、鬼面閣のような陵が深いものの方が光合成が早いのではないか?と考えていました。しかし今回の実験は、成長中で背が低くても成長は変わらないか、少し早い。
サボテンは光合成だけが成長の理由ではないという事でしょうかね。
短毛丸袖ヶ浦ウチワサボテンいわゆる接ぎ台に使われるサボテンは、根張りが尋常じゃないほど素早く根も強固ですが、根張りが良い品種ほど接ぎ台の素質があるかもしれません。
ぐっちぃさん、こんにちは!
接木は難しくも、とても面白いですね。まだまだ発展途上の、今後も進化を見せるであろう分野のように思います。家庭でも、二酸化炭素交換量とか簡単に測定できれば良いのですが、なかなか難しいですね。
あと、私がいまいち理論がよくわからないのが、親和性についてですかね。種類による成長の差や特性の差が、植物内のどのような生理学的・物理的効果によって左右されるのか、興味があります。
何処かにサボテン接木関係の学術論文とかないですかね(人´∀`).☆.。.:*・゚