今回はウチワサボテン(亜科)の発芽条件が、他の玉サボテンなどと違うというお話。
まずは下の写真。
実生のキリンドロプンチア・イムブリカタ Cylindropuntia imbricata(= Cylindropuntia lloydii)です。和名は鬼子角(= 瓦団扇、木団扇、匍松団扇)。北米南部~メキシコ産のウチワサボテン亜科に属するサボテンです。
ちなみに成長した姿は下の写真のような感じになるようです。www.llifle.comによれば、-28℃までの寒さに耐えられるらしいとても強い子です。しかしながら刺がサボテン界でもかなり凶悪なので、一般にはあまり人気はない種類でしょうかね。
【余談】
北米に生きているCylindropuntiaに対し、南米に生きているAustrocylindropuntiaという属があります。これらの区別は、刺に薄い紙状の鞘が付いているか付いていないかでできるそうです(キリンドロプンチアは鞘があるらしい)。
https://supersabotentime.com/page-2865/page-3437/ https://supersabotentime.com/page-2865/page-3298/
さて、このキリンドロプンチア、実は種を蒔いたのは、昨年の9月です。通常のサボテンの実生方法(いわゆる腰水で25℃ぐらい管理)で蒔きました。
しかし1ヶ月ぐらいたっても全く発芽せずで「あぁ、種の質が悪かったのかな?」と思ったのですが、とりあえずそのまま捨てずに放置しました。腰水と温度管理をやめて雨ざらし&直射日光の屋外で。
そんで、そのまま冬を越しまして、先月の7月はじめ。
写真の通り一部が発芽していました。
もともと、「ウチワサボテンの実生はずっと放っておくこと」、と情報は頂いていたのですが、本当にそのとおりなんだな!と思いました。ウチワサボテンすごい!
というわけで、そんなウチワサボテンの発芽について少し調べてみました。
(※:情報元が英語の論文ですので、いつもの通り翻訳が間違っているかもしれません。もし関心がありましたら、必ず元の論文を英語で読んで下さいませ!)
種子の休眠の存在
まず、ウチワサボテン亜科の種子は特別な休眠(seed dormancy)をするようです。
Pilcher(1970) indicated the presence of dormancy for Opuntia seeds, an observation later confirmed for a large number of Opuntia species (Bregman and Bouman 1983; Pérez 1993). Although most cactus seeds germinate within a week, germination for subfamily Opuntioideae often takes a few months.
↓翻訳
ピルチャーさんはウチワサボテンの種子の休眠の存在を示し、後にウチワサボテンの多くの種で確認された。殆どのサボテンの種子は1週間以内で発芽するのに対し、ウチワサボテン亜科の発芽は、しばしば数ヶ月を要する。
CACTI BIOLOGY AND USES Edited by Park S. Nobel: REPRODUCTIVE BIOLOGY, Eulogio Pimienta-Barrios and Rafael F. del Castillo
この話は、今回の私の発芽結果に、合致しますね。
これは、ウチワサボテンの花が咲き、受粉し、果実が充実して、種が地面に落ちるのが雨季の終わり頃であるからのようです。雨期が終わるということはその乾期が訪れます。一般に植物の発芽には水分が必要なので、乾期は発芽に適していません(温度も低いし)。よって、乾期の間は休眠します。
下記の図は CACTI BIOLOGY AND USES Edited by Park S. Nobel: REPRODUCTIVE BIOLOGY, Eulogio Pimienta-Barrios and Rafael F. del Castillo の図(元はBregman and Bouman 1983; Pérez 1993;)を参考に、日本語で書き直したものです。
というわけで、果実から採取した直後のウチワサボテン亜科の種子は、発芽に時間がかかる場合があるようです。
どっかから入手したウチワサボテン亜科の種が発芽しなくても、少なくとも1年ぐらいは待ってみても良いかもしれません。
光は発芽に関係ない
ウチワサボテン亜科の発芽に、光は関係ないようです。
All cacti from the Cactoideae subfamily (22 taxa) were classified as positive photoblastic (i.e., no germination in darkness), regardless of the temperature treatment used. Likewise, temperature fluctuation did not alter the seed sensitivity to light. On the other hand, the species of the Opuntioideae (five taxa) and Pereskioideae (three taxa) subfamilies are indifferent to light (i.e., germinated both in the presence and absence of light).
↓翻訳
(柱サボテン亜科(22分類)のすべてのサボテンが、使用した温度にかかわらず好光性種子として分類され(すなわち暗闇では発芽しない)。同様に、温度変動は光に対する種子の感受性を変化させなかった。一方、ウチワサボテン亜科(5分類)と木の葉サボテン亜科(3分類)の種は、光に無関係である。(すなわち、光があろうがなかろうがどっちも発芽する))
Siqueira-Filho, Inara Roberta Leal, Effects of light and temperature on seed germination of cacti of Brazilian ecosystems, Plant Species Biology Volume 31, Issue 2, April 2016 ,Pages 87–97
つまり、種は、覆土しようが、しまいが関係ないということでしょうかね。英語の表現を見る限り、嫌光性種子ということではなさそう。つまり土を被せなければならないということではないようです。
サボテンの発芽と光の関係については以下も参照のこと。
ということでなかなか奥深いですね!サボテンの発芽!
コメント
サボテン育てるの初めてだからタメになりました
へへっ、咲くのが楽しみだなぁっ